左利きQ&A

左利きにかんする疑問やお悩みはもちろんのこと、左利きをめぐる統計データやユーモア溢れる話題も続々と掲載いたします。このページではご質問だけでなく有志によるご回答もあまねく募集しております。「お問い合わせ」にございますメールフォームにご記入・ご送信ください。なお掲載につきましては当協会にて可否の判断をさせていただきますので、ご了承の程よろしくお願い申し上げます。
 
※「Q003 : 左利きが活かせる職業はありますか 」を更新しました(2018.10.13)。
※「Q002 : 自分自身や我が子や児童の利き手を知りたいのですが 」を更新しました(2018.10.1)。

 A 001 :
両親の利き手の組み合わせにより子どもが左利きとなる出現率が異なります。

 
どうして人間には利き手があって少数派として左利きが存在するのか?
素朴でありながらも難解な疑問ではありますが、誰もがその一因として考えるのは「遺伝」ではないでしょうか?
 
「両親とも左利きなのになぜ?」「いや両親とも左利きなのに子どもは右利きだ」......etc
 
いろんなパターンが考えられます。

そこで北米における両親の利き手の組み合わせと子どもの右利きの出現頻度、および双生児における利き手の一致率(こちらに関しては今回は割愛)について、ポラックとコレンという二人の学者によってまとめられた過去の研究資料の集成(1981年)を紹介してみましょう。

「両親の利き手の組み合わせと子どもの右利きの出現頻度」

・右利きの父×右利きの母の場合・・・88パーセントの子どもが右利き

・右利きの父×左利きの母の場合・・・73パーセントの子どもが右利き

・左利きの父×右利きの母の場合・・・79パーセントの子どもが右利き

・左利きの父×左利きの母の場合・・・60パーセントの子どもが右利き


以上の結果からいえることは、左利きどうしの親から左利きの子どもが必ずしも誕生しないことです。
ただし、これには遺伝的な説明のみならず、両親が左利きという環境的な要因も考えられます。
 
次に、父親よりも母親の利き手の影響を子どもが遺伝的にも環境的にも受けるのではないかという点です。いずれにしましても、両親のいずれかが左利きであれば子どもが左利きとなる確率は高くなると考えられるといっていいでしょう。

今のところ「遺伝」が利き手の要因として決定的であるとはいえないものの、有力な利き手の因子であると言えます。ちなみに「遺伝」という問題について考えるうえでどうしても無視できないのは、「優性」とか「劣性」といった遺伝形質についてです。遺伝形質と利き手にかんする仮説については、改めてご紹介いたします。

[参考文献]
『かくれた左利きと右脳』坂野登,青木書店,1982年
 


 

 A 002 :
国内外で考案された利き手テストがあり利き手の度合いを知る尺度になります。

 
「利き手」はどう判定すればいいのだろう?――利き手のメカニズムが完全に解明されていないこともあり、なかなか利き手そのものが客観視づらく、左利きと自称する人であっても箸やペン、ボール投げといった動作では「右手」であることも少なくありません。

以上の点を考慮し標準化をめざして作成された「利き手」判定テストでは、教育や躾(しつけ)の影響を受けにくい動作をピックアップする傾向にあります。たとえば「拍手するとき上にくるほうの手はどちらですか」などとたずねる単純な方法があれば、数十もの項目を設定して質問用紙を作成するといった方法もあります。
 
そもそも学校教育において「利き手調査」は義務づけられておらず、利き手をめぐる指導は教師の裁量に委ねられている現状です。
 
今のところ公共機関や団体が認定した判定テストも存在しませんが、十分に検討が重ねられた利き手テストのなかから、
 

(A)八田武志氏と中塚善次郎氏が作成した[N.H.「利き手」テスト]
(B)チャップマン夫妻が作成した[チャップマン利き手テスト]
(C)ニコルス等が作成した[フランダース(フリンダース)利き手テスト]

 
の3つをご紹介いたします。
 
 

(A)N.H.「利き手」テスト

 
このテストは、イギリスのオールドフィールドが作成した有名な[エジンバラ利き手テスト]を参考にして、日本の文化背景を考慮し1975年に作られました。

特筆すべき点は、オールドフィールドのテストには一項目としてあった「文字書き」は削除されていることや「箸をもつほうの手」といった項目もない点があげられます。

次の質問(10項目)に答えてみましょう。―― どちらの手を使いますか?(左手/右手/両方)

  

 N.H.「利き手」テストの質問一覧表
(1)消しゴムはどちらの手にもって消しますか?
(2)マッチをするのに軸はどちらの手にもちますか?
(3)ハサミはどちらの手にもって使いますか?
(4)押しピンはどちらの手にもって押しますか?
(5)くだものの皮をむくときナイフはどちらの手にもちますか?
(6)ネジまわしはどちらの手にもって使いますか?
(7)クギを打つときカナヅチはどちらの手にもちますか?
(8)カミソリ、または口紅はどちらの手にもって使いますか?
(9)歯をみがくとき歯ブラシはどちらの手にもって使いますか?
(10)ボールを投げるのはどちらの手ですか?

 

判定基準

各項目について、左手を使う場合は「マイナス1点」右手を使う場合は「プラス1点」どちらでもない場合には「0点」をそれぞれ配点します。10項目の合計がマイナス4点以下は「左利き」、プラス8点以上は「右利き」、それ以外は「両手利き」とします。

 
 

(B)チャップマン利き手テスト(チャップマン夫妻作成)

 
1987年に作成され「利き手」テストとしては新しい部類にはいりますが、ここ最近標準化されつつあるそうです。

次の質問(13項目)に答えてみましょう―― どちらの手を使いますか?(左手/右手/両方)

 

 チャップマン利き手テスト質問一覧表
(1)絵をかく
(2)文字をかく
(3)せん抜きを使う
(4)雪玉を木をめがけて投げる
(5)カナヅチを使う
(6)歯ブラシを使う
(7)ドライバーを使う
(8)消しゴムを使う
(9)テニスラケットを使う
(10)ハサミを使う
(11)マッチをするとき軸をもつ
(12)ペンキの缶をまぜる
(13)バットを振る前にのせるほうの肩
 
  

判定基準

各項目について「右手には1点」「両手には2点」「左手には3点」を配点します。その合計が13点から17点を「右利き」、33点から39点を「左利き」、それ以外を「両手利き」とします。 

 
以上、学術界で使われる「利き手」判定テストを、ごく一部でしたが参考までにご紹介しました。試してみた結果 、あなたの「利き手」はどちらだったでしょうか? 
 

(C)フランダース(フリンダース)利き手テスト

 
フランダース(フリンダース)利き手テストはニコルス、トーマス、レッチェル、グリムショーがオーストラリアで開発し2013年に発表された非常に新しい利き手テストです。長らく利き手テストのスタンダートとされてきた[エジンバラ利き手テスト]が開発されて40年以上が経過していることから、新時代にマッチした項目が設定されています。
 
次の質問(10項目)に答えてみましょう―― どちらの手を使いますか?(左手/右手/両方)
 

 フランダース(フリンダース)利き手テスト質問一覧表
(1)ペンを持つ手
(2)スプーンを持つ手
(3)歯ブラシを持つ手
(4)マッチを擦るときマッチ棒を持つ方の手
(5)消しゴムを持つ方の手
(6)縫い針を持つ方の手
(7)ナイフを持つ方の手
(8)金づち(ハンマー)を持つ方の手
(9)ジャガイモ等の皮をむくピーラーを持つ方の手
(10)絵筆を持つ方の手
 
  

判定基準

各項目について「左手には−1点」「両手には0点」「右手には+1点」を配点します。その合計が−10点から−点を「左利き」、−4点から+4点を「両手利き」、+5点から+10点を「右利き」とします。 

 
以上、学術界で使われる「利き手」判定テストを、ごく一部でしたが参考までにご紹介しました。試してみた結果 、あなたの「利き手」はどちらだったでしょうか?
 
近い将来、当サイトで上記いずれかの利き手テストに関してアンケートフォームを設置し、自らの利き手意識と利き手テストでの判定とのズレを検証する予定です。そのときには何卒ご協力よろしくお願いします。

[参考文献およびウェブサイト]
・『左ききでいこう!』フェリシモ左きき友の会&大路直哉編著、2000年
http://www.flinders.edu.au/sabs/psychology-files//research/brainandcognition/FLANDERS%20Japanese.pdf
 
 


 

 A 003 :
左手が器用に使えると有利な職業のリストをご紹介します。

 
20世紀初頭に「両手利き文化協会」という友愛団体がイギリスで誕生し一世を風靡したことをご存じでしょうか?
人類の大多数は右利き。そんな右利きへの意識改革として利き手でない「左手」を使う訓練をしよう。そうすれば、バランスのとれた左脳と右脳の発達を可能になる。仕事の能率があがる。人間個々の能力だけでなく国益をも増進する……等々。AI(人工知能)が人間の労働を奪うとまでささやかれている昨今においては該当しない主張があるものの、「右利き優位の社会」に一石を投じる左手教育構想が世に問われたのです。
ちなみに、この協会のスローガンは「左手への公正と平等」。また、発起人であるジョン・ジャクソン自身、左利きは左利きとしての天分を生かすべきだとし、左利きは「右利き優位 の社会」において「右手」を使う機会が多く両手利きの要素を持ち合わせている、と考えていたようです。
ここで断っておきますが、当協会では「右利き優位 の社会」だから「両手利きになったほうが便利」だなんて決して主張することはありません。左利きが左利きとして住みよい社会の到来を切に願っていますが、いまだ「右利き優位 の社会」に生きる左利きなのです。だからこそ周囲の環境によって右利き以上に両手利き的な要素を育みやすい状況下に置かれている現実を否定することはできない、と仮定しておきます。

以上はさておき、かのジャクソン、『両手利き』なる本を1905年に上梓しています。その本のなかで私が関心を引いたことが2つ。

1つめは、ジャクソンが日本の工芸品にえらく感激して「日本こそ両手利き文化の模範」と絶賛したこと。その是非はともかく、「知日派」の一面 をのぞかせていました。

2つめは、「右利き優位の社会」のなかで両手利き――「右手」だけでなく「左手」が器用に使える――が有利かつ有益な職種(スポーツ・商業を含む)の一覧表です。驚くことなかれ。その数ざっと504職種。よくもまあこれだけ根気強く紹介したものです。
 
ここではスペースの都合上504職種まるまるの掲載を差し控えますが、現代の日本社会においても馴染みのある職種をご紹介いたします。

「左手が器用に使えると有利な職業」

(1)アコーディオン奏者/(2)助産婦・産科医/(3)会計士/(5)役者 (7)飛行士/(9)アナリスト/(10)解剖学者/(13)弓術家/(14)建築家 (16)芸術家/(17)天文学者/(18)アスリート/ (20)耳科医/(26)パン職人/(27)指揮者/(28)理髪師/(33)野球選手/(42)自転車競技選手/(43)ビラ貼り人/(45)鍛冶屋/(48)接骨医/(49)製本業/(50)靴職人/(55)ボクサー/(62)煉瓦積み職人/(68)肉屋/(70)家具師/(77)大工/(82)運送・郵便配達人/(87)レジ係/(92)客室係のメイド/(94)狩猟家/(95)薬剤師/(98)カイロプラクティック/(103)事務員・ホテルの受付係/(114)コメディアン/(115)植字工/(119)曲芸師/(121)調理師/(122)酒屋(酒利き)/(123)調理師/(125)書生/(128)記者/(137)室内装飾/(139)歯科医/(140)デザイナー/(144)調剤師/(147)ダイバー/(150)仕立て屋/(153)運転手/(156)ドラム奏者/(159)編集者/(160)電気工事士/(163)エンジニア/(165)整備士/ (166)彫刻師/(167)清書係/(170)版画家/(170)農民/(171)獣医/(175)バイオリニスト/(177)消防士/(179)漁師/(184)花屋/(185)山林学者・森林官/(191)庭師/(194)地質学者/(202)ガラス工芸家/(218)ガイド/(222)体操選手/(224)美容師/(229)ハープ奏者/(253)漆職人(Japanner)/(257)騎手/(259)ジャーナリスト/(260)手品師/(296)マタドール/(308)坑夫/(310)モデラー/(313)登山家/(314)ミュージシャン/(320)看護婦/(325)オペレーター/(326)眼科医/(331)オルガン奏者/(348)写真家/(349)医師/(350)ピアニスト/(353)調律師/(381)リポーター/(413)看板屋/(440)外科医/(441)測量士/(448)教師/(449)通信技師/(453)テニス選手/(468)ろくろ師(陶芸家)/(470)タイピスト/(477)バイオリン奏者/(499)ライター(作家)

 
ここで割愛した職種(つまり全体の5分の4)のほとんどは手先の器用さを要求される「職人」的な仕事です。その他ユニークな職種として「バーのホステス(女性バーテンダー)」といったものがありました。また「ゴルファー」もあげられていましたが、ゴルフコースのほとんどで右打ちでの球道が考慮されているため、左打ちという観点からあえて除外させていただきました。
いかがでしょう。もちろん、現代的な職種が見当たらないのはやむをえないとしても、おおよそ私たちの周辺で確認することが可能な職種も多々あるはずです。さまざまな職業に就く読者からのご意見もうかがいたいところです。
 
余談ですが、フランスでは職業と利き手に関して政府レベルでの調査研究が1960年代に行なわれたようです<※注1>。日本でもそういった調査が政府レベルで行われる日がやってくることを、楽しみにしたいものです。 
 

<注1>
1962年、政府や医師会、そして多くの大規模労働団体(組合)からの公的な支援を受け、職務における左利きの現状に関する質問調査を、フランス労働省が行ったという。その結果 、少なくとも150万人の左利きの作業労働者がフランス国内に存在する、と試算。職種別 調査によれば、左利きの割合は、医師・9%、歯科医師・13%、バイオリン奏者・8%、ピアニスト・10%だったという。いずれも両手を器用に使えることが有利となる職種といえる。一方、服飾産業では3.4%(注:女性のみ)と低率。調査対象者全体では、左利きの男性は11.2%、女性は9.1%だった。


[参考文献]
・Jackson,J.Ambidexterity,London:Kegan Paul Trench,Trubner & Co.Ltd.,1905
・Paul, D. Living Left-handed, London:Bloomsbury Publishing Ltd.,1990
・『リーダーズ英和辞典』研究社